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調査研究などの記録 > 考察 > サシバの渡りと風 その3

サシバの渡りと風 その3

投稿者: Avocet 掲載日: 2011-5-4 (2555 回閲覧)
  サシバの渡りと風 その3
(サーマルとは小規模な上昇気流です)
 
  タカ渡り観察グループ 池上 武比古  
 
○斜面上昇風はリフトが弱い
 秦野・権現山でタカの観察を始めたときは、北東2.5kmの大山からの稜線、高取山あたりを一生懸命見ていたものだった。
 白樺峠で観察した人には分かるだろうが、東の通称、鉄塔、台形のあたりでサシバが沸き、ソアリングしながら柱となって高度を稼ぎ、それがこちらに流れてくる、というイメージに重ねて観察していた。ところがそれは勘違いであることが分かった。
 確かに稜線から何かが沸いてくるのだが、大半はカラス、トビで、それも上昇しては降りることを繰り返すばかり。しかし、いつの間にか、われわれの上空をサシバが西へ滑翔してゆくのである。
 「稜線での動きを見落としたのかな」と当初は思ったが、そうではなかった。東の稜線では、日が昇るにつれて緩やかな上昇気流ができてはいたが、これは気象学ではサーマルブローとも、アナパチック風、斜面上昇風と呼ばれ、「とんびがくるりと輪を描いた」といわれるふわふわ上昇風である。
 白樺峠でみたような上昇風は松本平から谷筋を登ってきたリフトの強い「谷風」で、それはサーマルブローが大きく発達したものだった。権現山でみた稜線付近の風は弱く、サシバは稜線はるか東のどこかでサーマルに乗って一気に高く越えて来たのだった。
○パラグライダー飛行がヒント
 このことに気がついてサーマルについて考え始めたのだが、ある日、権現山から秦野・渋沢盆地を挟んで西7キロの台状の山、チェックメイトCCに行けば、神奈川でのサシバの出口・矢倉岳への風の流れが分かるのではと考えて、仲間と寄ったとき、出会ったパラグライダー・インストラクターの話は示唆に富んだものだった。
 東名沿いの崖の上に、パラグラの離陸場がある。パラグラが助走10mぐらいでキャノピー(後ろの翼)を一気に広げてテイクオフ(離陸)できるのは、眼下の東名で温められてくるアナパッチ風に乗ったからだが、それだけではとりあえず離陸できても、さらに上にはいけない。
 したがってパラグラは体勢を確保すると、何度もターンを繰り返し、失速を恐れて逃げるようにサーマルがいつも出る南東の中井(東名SA、公園がある)、北東の高松山、丹沢南麓を目指して行く。
○サーマルは回りとの温度差2℃で
 サーマルとは何か。インストラクターの話を手がかりに、パラグラ飛行の教典「Thermal Flying」(邦訳)など単行本、パラグラ関係のHP、ブログなどを探ってみると「日射によって地面が暖められ、その熱が空気に伝えられ、回りとの温度差が約2℃になると地面の拘束力を振り切って上昇する熱上昇気流」とある。
 ポイントは「回りとの温度差が2℃ぐらいになる」というところにあって、サーマルができる場所に太陽光線が当たる斜面、裸地、耕作地などを挙げているが、インストラクターの話では、箱根の外輪樹林の中にアサヒビールの工場ができて以降は、工場の上にサーマルができ、それまでサーマルが大きかった矢倉岳のリフトは小さくなったという。
 確かにグーグル・アースで見ると、樹林の中にアサヒビール工場の大きな屋根が光っている。これでは太陽が照り始めると、「回り」との温度差があっという間に大きくなってサーマルができ、中井から滑翔してきたサシバは、ここで明神ヶ岳方向の西にターンするだろう。とすると、矢倉岳を通過するサシバは丹沢越勢となるが、どうだろうか。
○暖気塊は積雲へ
 サーマルの次の特徴は、大きな空気の塊となって地上の重力を振り切って上昇し始めると、風に流されて漂うのだが、回りの比較的温度が低い空気層とは交じり合わないということである。
この現象は実に意外なのだが、地上で「温度差」が続いていると、次から次にこの「暖気塊」ができて上昇し、それが発達すると積雲となり、さらに風に流されたその積雲がぽかりぽかりと続いて浮いた状態になる。
 その気になって天気のいい日に空を見上げていると、積雲が連なっている、これをクラウドストリートといって、パラグラのパイロットはよだれを流さんばかりにクラウドストリートににじり寄ろうとするのである。
 積雲の下にはサーマルがあって、続いている積雲の下を狙ってソアリング、滑空を繰り返してゆけば遠くまで行けるからである。ただし、どの積雲もサーマルを保障してくれないので、ここは経験がものを言うようだ(積雲の見分け方は後述)。
 サーマルのでき方は「回りとの温度差が2℃ぐらいになる」ということが条件であるということは、さほど大きな面積では発生しない、せいぜい運動場一つ分ぐらいではなかろうか。
 事実、回りを丘陵、丹沢山塊に囲まれた秦野・渋沢盆地の中央には常時サーマルが発生していいように思えるが、パラグラは盆地中央を避けているし、サシバのタカ柱もできない。できるのは、盆地と丘陵、山塊との境あたりなのだ。温度差がないとサーマルはできない、したがって面積は狭いというわけだ。
(次回はサーマルの見つけ方)
 
  【権現山から見た渋沢丘陵(奥が中井)、矢倉岳。この近辺がサシバの通り道】

権現山から見た渋沢丘陵(奥が中井)、矢倉岳
 

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