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調査研究などの記録 > 考察 > サシバの渡りと風 その5

サシバの渡りと風 その5

投稿者: Avocet 掲載日: 2011-8-7 (3327 回閲覧)
  サシバの渡りと風 その5
(サーマルを探すには)
 
  タカ渡り観察グループ 池上 武比古  
 

○北アルプスを越えるタカたち

 北アルプス深奥、黒部源流の雲ノ平、高天原、一度は遊んでみたい場所だが、その2900mを越える山稜を、秋に次々とタカが渡っている。黒部五郎小屋からだというその話を聞いたのは20年ほど前になろうか、赴任先富山の野鳥仲間からだった。
 東京からでは、そう簡単に登れない朝日岳、剣岳、立山、薬師岳、黒部五郎岳。富山はその山々に「ちょっと行ってみようか」と車で1時間、登山口にたどり着けるという好条件下にある。ところが当時私は足の故障で登山ができなくなった無念さからか、憧れの雲の平から黒部五郎岳にタカが飛ぶということには、ただただうらやましく思ったものだ。
 だが同時に、どうしてそんな高所を飛ぶの?東から南に行くのなら、海岸沿いに飛んで、それから神通川を南下すればいいじゃないか、とも考え、その不思議さが頭に残っていた。

○パラグライダー憧れのウェーブ

 それが「そうだったのか」と合点がいったのは、タカ渡り観察をする中でサシバが乗るサーマルの条件を探っていたときに出会ったパラグライダーの本だった。パラグライダー、パラシュートグライダーの略で、リフトする風に乗って上昇するスカイスポーツだが、動力源は上昇気流だけ。主にヨーロッパアルプスで広がって、パラグラの距離競技ではアルプスの上の山岳波(ウェ-ブ)に乗ることが必須の条件とされているとか。
 強い風が山脈に対し垂直に吹き付けると、風は山を駆け上がり山稜を越えて波打ち、山稜の風下で持ち上がる。これがウェーブの第一波、また次の山稜にぶつかると、さらに第二波が発生する。この風に乗ると距離、高度は一気に稼げるのである(併用図参照、図にある通り、リフトするウェ-ブができる一方で下降する流れでローターという乱気流ができる)。
 NHKでエベレスト(8848m)の峰を越えるアネハヅルの雁行を見たことがある。「そんなに無理して、空気の薄い9千mの高さまで飛ぶの?」とびっくりしたが、モンスーンの風に乗って一気に飛び越してゆく。もちろん、後ろを押す風がなければ駄目なので、推力が弱いと引き返したりもするものの、順風に乗ればアジアの背骨のような山々をウェ-ブに乗って一気に中国・四川省まで飛ぶようだ。

○山脈をものともせず西へ西へ

 サシバの渡りを観察しようと、仲間と場所探しを始めたとき、八王子を通過するサシバ約2千羽は、丹沢山塊の東麓を南下、南麓沿いに秦野のあたりに来るのではないかと考え、まずは秦野・権現山にベースを置いた。
   どうも人間は、自らに引き寄せて考えがちで、丹沢山稜は高くても標高は1600m程度だけれど、結構きつい登りの経験からすると「タカはそんなにしんどい思いをして丹沢を越えるだろうか」と思ったからであった。
 しかし、どうも様子が変だ、八王子・城山湖を通過するサシバの数とわれわれの観察結果はリンクしない。さらに仲間が秦野の東、伊勢原山中で頑張って観察し、城山湖のデータと照らし合わせると、城山湖のサシバはほとんど南西、丹沢山塊に向かっており、伊勢原の方に回ってくるのはまれだった。
 多分、城山湖を飛んだサシバは丹沢山塊を横断して高松山、矢倉岳あたりから富士山麓に抜けているのだろう。このことから、秦野周辺を抜けるサシバは八王子勢ではない、と半ば結論付けたのだが、そのころに知った「ウェーブ」論で、その見方は決定的となった。

○ホップは斜面傾斜風、谷風

 ウェーブに乗るためには、押し上げてくれる風が必要で、まずは太陽が照り始めると山際に普通発生するのが斜面上昇風(アナパッチ風)である。
 地面には斜めに差し込んでくる太陽光も斜面には直角に当たるので、明け方から順番に山の東麓、南麓とアナパッチ風は発生する。
 斜面を駆け上るアナパッチ風がふわふわ風だとすると、その推力を強くするのが谷風であろうか、昼近くになって谷間の気温が平地より高くなって気圧が少し低くなり、平野から谷筋を登るように吹くのが谷風である(この逆が山風という、その大規模なのが海陸風で次回に説明する)。
 白樺峠でタカ渡りを観察していると、東方3キロぐらいの峰の上に次々と湧き出るタカ柱は、一気に上昇している。谷風に乗って急上昇、それが白樺峠へと流れてくるわけだ。
 ただ、サシバたちは白樺峠だけを通るわけではない、松本平で収束した谷風にサシバは乗ったように、松本盆地のあちこちで盆地からの風に乗って北アルプスを越えているだろう。
 以前、白樺峠の駐車場奥の奥穂、西穂が見えるところで登る準備していたとき、ふっとその方向に目をやると、沢渡のあたりにタカ柱が見え「なんだありゃ、すごいぞ30羽はいる」と叫んだが、このタカ柱は白樺峠からは死角になって見えない。
 この集団は、燕、常念、蝶ヶ岳の3千mに迫る山稜を越えてきたのだろう。このような、ウエーブ乗りは、白馬連峰など北アルプス全体の随所で見られるに違いない。 北アルプスでの観測点が白樺峠だけというのはいかにももったいない。観測点を広く展開すれば、すごい数のサシバが渡っていることが証明されるのに。

(次回は海陸風、山谷風)。
 
 
【 山岳波 】

 山岳波
(山岳波「気象予報士Kasayanのお天気放談」から
 

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