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調査研究などの記録 > 考察 > サシバの渡りルート 富士山北麓

サシバの渡りルート 富士山北麓

投稿者: Avocet 掲載日: 2014-8-21 (13320 回閲覧)
記事末尾に PDF 版のファイルが添付されています。

 

浮かび上がったサシバの渡りルート 富士山北麓がカギ

 
  ふれあい自然探鳥会・タカ渡り観察グループ
横浜市都筑区 池上 武比古

 
   2006年秋、 神奈川県下一斉のタカ渡り調査参加を契機に秦野の観察が始まり、 この秋で9年目。当時の関心は県下のルート探しだったが、おおよその概略が分かり、さらにレベルを上げるのは二次的な問題となった。
 なぜなら、静岡北の杉尾山、平山林道で1万5千羽以上のサシバの渡りが明らかとなり、それがどこから飛来したのかが現在に至っても分からないのでは、神奈川県下を飛ぶ3千羽ほどのサシバの動向は、重要度が落ちると考えたからである。
 とはいっても、静岡への集中を解明するにはデータはあまりにも乏しいのだが、幸いなことに、このころから始まったサシバ、ハチクマ衛星追跡記録の積み重ね、従来の展開、視点にこだわらずに観察するパイオニアの努力で、すこしずつルートが見え、やっと富士山北麓がカギであることが浮かび上がってきた。

 
 

〇衛星追跡データが増えた

 今春、秦野・菜の花台でのサシバ・カウントは200羽を超え、秋の400羽台を考えると好調だった。なぜ好調かといえば、単純な道理で、春に雌雄が戻って2羽のヒナが孵り秋になって南に戻るとすれば、春のカウントは秋の半分があっていいと考えるからである。

 ところが、秋に1万5千羽以上を数える静岡のこの春は700羽、何とも少ない。サシバは平山農道のはるか南を飛んだのか、それとも山稜越しの見えない北を飛んだのかと考えても、東海以東でデータを公開している春の観察ポイントは菜の花台と静岡だけ。 そこで環境省図書館で衛星追跡記録を探すと「渡り経路による衝突影響業務報告書」(環境省自然環境局)」などにサシバの春秋往復30例、そのうち太平岸沿い飛行の8例がみつかった。

 衛星追跡といっても、サシバの背に装着した発信機が始終位置情報を出しているわけではない。消費電力を節約するために半日作動して一日休むという間隔を置いた発信であり、まるっきり受信できない時もあって不安定だから、送信のあった地点をつないでルートと解するわけにはいかない。まあ参考情報のレベルではあるが、ないよりましである。

〇春のサシバ、伊勢湾あたりで北転?

 その記録を栃木県と奄美を往復した4例を参考に日本地図に落とした航跡が図(渡部徹さん作成)である。
 この図でも、「日本のタカ学」(東大出版会。樋口広芳編)所収の「衛星追跡により明らかになった渡り経路」(山口典之長崎大准教授)論文のサシバ全航跡を重ねた地図でも、九州・宮崎県東岸、愛媛県南部、高知県南部と春秋の航跡はほとんど重なっている。

 それを証明するように、高知県南部の春観察結果は5千羽とずば抜けて多く、さらに秋の半分以上を越え、春秋ともにルートに乗っているのである。(ちなみに春の観察では、高知の南で1000羽ぐらいを観察し始めると2,3日たって、秦野でもサシバ飛行が本格化する)

 春に高知県南部を通過したサシバは徳島県で日本海側組、太平洋側組に分かれ、さらに太平洋側組は紀伊半島を通過すると、8例のうち6例が伊勢湾近辺で北ないし北東に転じる。北転するわけは、サシバの飛行が省エネであり、伊勢湾海風、遠州灘海風という順風に出会うと、大まかな方向に問題がない限りそのまま風を利用したとみられる。その飛去方向をそのまま延ばしたら、長野県南部、山梨県となる。

 はて、山梨?と思っていたら、イラスト画家の水谷高英さんが「バーダー」連載の「FieldReport」(42回目)に記した観察記に出会った。水谷さんが4月1日に行った山梨県内6か所の駆け足観察記では、富士北麓本栖湖で20羽を見たほか、鰍沢、精進湖など各所30分ほどの短時間観察でサシバの渡りを確認している。衛星情報とつなぎ併せると「そうか、こっちに来るのか」と思ったわけである。

 

〇秋の渡りも甲府盆地、富士北麓が太いルート?

 衛星追跡のデータを見ていて、春だけではなく秋の観察にかかわる面白い事実が見つかった。8例中6例は静岡市周辺を通っていて静岡の1万5千羽の実績を裏付けるものではあるが、ほかの2例では愛知県で探知される前の発信地は身延町北西部(9月29日)、山梨県早川町(9月25日)だった。何これ!というところだが、実は静岡・杉尾山の観察結果と符合するのである。

 9月下旬、静岡・杉尾山は4, 5千羽規模の大出現に身構える。「今日もこれで終わりかな」と思い始める午後3時ごろ、北4㌔の山稜上を次から次とサシバは飛ぶのである。例年繰り返される現象の実態を極めるべく、静岡の仲間はその山稜に登って観察をすると、何と山稜よりさらに北におびただしいサシバが飛んでいるというのだ。静岡の観察地は平山林道、さらに北6㌔の杉尾山であるが、杉尾山からはその稜線は5㌔北、その先のサシバの群れは見えない。

 われわれも、秋の権現山観察の合間を縫って、静岡の大量通過の出所を確かめるべく、遠征観察をしている。ただ、これまで分かったことは朝霧高原を多い日で500羽ぐらいが渡ることぐらいで、とても静岡の全貌に迫れそうもない。タカ渡りの観察は、日にち、時間が合わないと空振りすることが多く、いまだに絶好の観察ポイントを見つけることができないでいる。

 ところが、われわれの想定をあざ笑うように、山稜のはるか20㌔北の甲府盆地近く、身延町・久成周辺で昨秋かなりのサシバの西進を記録している(楠木憲一氏、甲府支部)。観察記録は南アルプス前衛の富士見山(標高1640m)付近に集中し、そこから西は南アルプス赤石岳、聖岳。サシバは西進して南アルプスを越えるのか、それとも大井川沿いに南転するのか(ちなみに2年前のHP公開ハチクマ・プロジェクトでは、ハチクマは大井川沿いに南下し、南アルプスが切れる場所で東転してみんなを仰天させた)、興味深いのだが、もっと面白いのは、飛来方向を見れば水谷さんの記録につながることである。

 富士見山の東、天子山塊を越すと本栖湖、精進湖で、水谷さんが春の渡りを確認した場所である。ということは、この富士北麓の東西ラインは、春も秋もルートなのか?さらに昨秋には大月、都留で仲間が500羽あたりのサシバ集団の通過を確認しており、それらの大半は西進していた。ということは、この富士北麓ルートにつながるのか。

 静岡の大量通過は、甲府盆地あたりから南進してきた勢力が、どこかで東転しているのではないかと想定し、観察ポイント探しをしてきた。この想定は見当違いだったのか、それとも、場所は分からないどこかから西進している大集団がいるのかもしれない。この秋はこの富士北麓ルートを中心に探ってみよう、大きな観察ポイントが浮上する可能性がある。

 タカの渡り観察で知られる白樺峠、それに静岡は熱心なタカ・ウォッチャーが探し当てたものだが、既に過去のポイントである、ここのデータだけでタカの渡りを語れない、さらなるポイント、ルート探しが必要である。 (了)

 
 
 太平洋を飛ぶサシバ渡りルート
 

この記事の添付ファイル
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浮かび上がったサシバの渡りルート 富士山北麓がカギ
2014-8-22 3202

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