サシバの渡りと風 その7
カテゴリ : 考察
投稿者: Avocet 掲載日: 2011-9-27
  サシバの渡りと風 その7
(最終回・今後はサーマルができる天気概況を探ります)
 
  タカ渡り観察グループ 池上 武比古  
 

○秋の観察が始まります、気軽に参加してください

 春にタカの渡りの観察を終えたと思ったら、いつの間にかサシバたちが南に帰るシーズンが迫ってきました。この秋も9月下旬(20日過ぎあたり)から10月中旬まで、秦野市周辺の権現山、菜の花台、湘南平などで観察をします。気軽に参加してください。
 観察日,場所などは、ウェザーレポート・秦野での天候、風向予報などを見て、遅くとも前日午後7時までに「ふれあいML」で連絡しますが、ふれあいMLに参加していない方はアドレスを、パソコン、携帯ともにお持ちでない方は連絡先を池上にお伝えください。
 観察日は、「雨の後の晴れた日(風が弱いことが条件)」が渡りの条件がいいので、それをねらい目に設定します。また、これまでの経験では9月25日前後、10月5日前後が渡りの集中日になるので、そのあたりは連日の観察となります。

○東のサーマル・ポイントはどこか 

 秋観察は6年目になります。熱心な仲間たちの努力で、昨年はサシバを300羽弱まで確認しましたが、私の勘では実際はその倍は飛んでいるでしょう。この秋はさらに確認数を増やしたいものですが、同時に渡りルートを推測する材料も増えてきたので、さらにサシバが渡るルート、気象条件について煮詰めたいと思います。
 これまでの目撃例から、秦野周辺を通り過ぎるサシバたちの大半は三多摩沿いに来るのではないかと最近考え始めています。当初は、東京、川崎、横浜など大都市圏はサーマルが大きくそれを利用して海沿いを経由しているのかな、と考えました。ところが、パラグライダーは経験則から大都市圏のサーマルは気流が不安定なために避けていることや、昼前後に内陸向きに吹き始める海風を思うと、大都市圏を飛ぶのはサシバにとっては面白くないように思えます。また、三多摩、八王子周辺を通り過ぎる大集団の大半は南西に丹沢を横切っているようなので、結局は秦野に来るのは三多摩の南を通った集団と、鎌倉方面勢の分岐したものではなかろうか、というのがとりあえずの推測です。
 権現山で観察を始めたころは、3キロ東北の高取山稜に浮上する鳥影を一生懸命眺めて「あれはカラスか、トビか、はたまたノスリか、ひょっとしてサシバか」と騒いでいましたが、結果的には無駄な努力を重ねていたようです。というのは、その鳥影とは関係なく、サシバは突然、弘法山などの上空に現れるからです。ということは、サシバはその山稜高く飛び越してきたのであって、かなりの高度を稼げるサーマルが東のどこかにあるようです。その場所はどこか、それが知りたい、それが分かれば、その延長上に飛来先が見えてこようというものです。
 

○サーマルが発生する条件

 われわれが観測を始めるときに、いつも風向、風力を確認する。そして、秋の渡りならば、風向が北ないし東なら「順風でよし」となるのだが、よく考えてみると、サシバに関して風向はあまり関係がないように思える。もちろん、サシバにとっては逆風よりも順風がいいけれど、それよりもサーマルを捕まえてどこまで上昇できるのかが関心事であろう。
 上がったら上がっただけ滑空できる距離は長いのだから、十分に滑空できれば多少の逆風は気にならないのではないか、というのがこれまでの経験からの推論。とすると、風向、風力よりも、サーマルが発生しやすい気象条件は何か、それは「日射が強く風が穏やか」ということが基本になるが、そういう状況はどういう天気概況のときに発生するのか、それを重点的にチェックしてみたい。
 さらに気象条件で問題になるのは高度である。天気予報でいう風力、風向は地上天気図に基づいた数字だが、高層天気図は850hPa(ヘクトパスカル、標高1500m基準)、700hPa(3000m基準)など4種類がある。サシバが飛ぶのは地上50-1000mと言われているので、天気図では地上と850hPaの中間あたりである。
 そのあたりを占うデータはどこにあるか、どう読めばいいか、とHPで探すと「天気予報士Kasayanのお天気放談」(http://kasayan.naganoblog.jp/d2011-08.html)という格好のチューターがありました。
 天気概況を判断するに「気象庁のシミュレーションモデル」「ヨーロッパ中期予報センター」「アメリカGFSモデル」「短期予報解説」など、すさまじく専門的な素材を駆使して説明しています。まだまだ一度読んで分かったということになりませんが、それにしてもそれから引き出される関東圏の風向予測が気に食わない(併用図参照)。大体が海風の影響もあって北ないし北東向きなのです。これが、秋もそうだと、サシバには逆風です。
 ちょっとレベルの高いお勉強の上、季節風、海風を考慮しながら、サシバが嬉々として飛ぶ条件を考え、機会があればまた「サシバの渡りと風」について記したいと思います。(了)
 
 
 気流

※夏の関東は日中、いつもこのような気流です。秋もこうではこまりますが。(HP「気象予報士Kasayanのお天気放談」から)